しみ抜きのワンポイントアドバイス partⅡ
~汚れの種類~
汚れの種類として水性の汚れや油性の汚れや、またカーボンや金属粉など何にも溶けない不溶性の汚れなど、いろいろと分類されますが、今回は切り口を変えてみたいと思います。
そもそも汚れの成分は、100%水性だとか油性だとか概ねありえません。多くの場合それらが複合した異物が衣類に付着するから汚れとなります。
では、汚れとシミの違いは何でしょうか。
これからお話しする汚れの話は、その辺りの疑問にもお答えします。
下に続く
電車内や人混みなど
マスク着用を気にする場面など「エチケット用」として最適
呼吸がしやすく、蒸れないクールエアマスク「Be*AIR」
衣類に異物がついても、手で払い落せる程度なら問題はありません。
汚れに何らかの粘着性などがあり衣類に固着している状態、または繊維の糸と糸の間に挟まり定着している状態。この様な付着の汚れは殆どの場合、洗剤を使用して洗濯や手もみなどで落とすことができます。
頑固なものでも、食器用の洗剤やブラシなどを使用して落とせるでしょう。この辺りからしみ抜きと呼べるのではないでしょうか。
汚れが次の段階になると、繊維に絡まり凝固して固着してしまいます。汚れの成分が硬く固まってしまう。例えるなら血液に温度を加えたような状態で、たんぱく質が凝固して固まってしまい、なかなかか取れないシミになります。
この様に汚れが変質して固まってしまう状態を、難しい言葉で「脱水縮合」と呼びます。この脱水縮合には様々なパターンがあり、それぞれの汚れで違いのです。
例えば血液が凝固した場合は、酵素系の洗剤や大根などの汁に含まれる酵素を使用しますよね。これはたんぱく質分解酵素にて、凝固したたんぱく質を分解してしみ抜きしているのです。この様に凝固した汚れを分解することを、難しい言葉で「加水分解」と呼びます。
脱水縮合した汚れを加水分解するには、先程も記したように汚れごとにすべて違うので、プロのしみ抜きは、汚れに合わせて適切な薬剤を使用して、加水分解させてしみ抜きいたします。
汚れが最終段階になると、繊維と結合してしまいます。
これは単に、糸に汚れが引っ付く状態ではありません。分子レベルで繊維と汚れが結合した状態です。
簡単にイメージするなら染色ですね。染色は染料と繊維が結合しているから、何度も洗っても色・柄が取れないのですが、これが染料ではなく汚れだと、染めたように落ちないシミとなります。これは大変ですよね。
分子の結合には、原子同士が結合するイオン結合や共有結合がありますが、それ以外にも水素結合と呼ばれる結合があり、これは染料の多くもこの水素結合で染まっています。
このシミを落とすには、かなりの高度なテクニックが必要で、プラスやマイナスのイオンを持った、酸やアルカリを使用したり、水素の結合を緩和させる薬剤を使用したりして落とします。この様にしみ抜きは、論理的な根拠に基づいた手法と熟練のテクニックによる、エキスパートの仕事であると言えます。
しかし、ここまでお話したのは、衣類にまたは繊維に付着した汚れの話です。
汚れはこれだけではありません。例えば、黄ばみはどうでしょうか。繊維その物を変色させる汚れも存在します。
次回は、そんなお話をしましょう。
(文/Takeshi Tsukiyama)
イドカバネットは
衣類やお洗濯・お掃除など日常生活にまつわる情報を毎日お届けしています
気に入ったらFACEBOOKやTwitterから更新情報を入手してね