イドカバネット > しみ抜きを行なう上での二つの手法!プロの技はこうしてつくられる
きれい
2016/01/17

しみ抜きを行なう上での二つの手法!プロの技はこうしてつくられる

イドカバネット
シミ抜きにおいて、漂白剤は非常に便利なものです。また、最近はその使い方も広く紹介されておりまして、皆さん中には、漂白剤をシミ抜きに又お洗濯にと、上手く活用されておられる方もいらっしゃいますね。

 少し前の話になるのですが、「洗濯した際に失敗して、白の綿シャツと色柄ものの綿パンツに、他のものからの染料が色移りしてしまった」と相談されました。

 早速、お預かりしてシミ抜き&クリーニングをいたしました。

 そして後日、引き取りに来られた際の話です。

下に続く

 

電車内や人混みなど
マスク着用を気にする場面など「エチケット用」として最適

呼吸がしやすく、蒸れないクールエアマスク「Be*AIR」


 

宅配・保管クリーニング(ラクリ)・株式会社ルビー
宅配・保管クリーニング(ラクリ)

 


 




お客様
「キレイに染料が落ちていますが、漂白されたのですか?」

カウンター係
「いえ、今回のシミ抜きは、漂白剤を使用しておりません。」

お客様
「ええっ(@_@)」


実は、白の綿シャツの方は、ご自分で漂白剤を試されたようなのです。それでも全く落とせなかった。更に、このお客様はとある化学メーカーにお勤めで、名刺には理学博士とありました。

 化学の知識を持っておられますので、市販のものでも漂白剤の成分は変わらないこともご存じです。同じ成分で落とせたのなら、何かコツでもあるのかと思われたようです。 

 ですから、今回どのようにして染料を落としたか、そのノウハウに興味を持たれたのですが、このシミ抜きでは、漂白剤を使用していないことに驚かれました。


 そもそも漂白とは、酸化反応もしくは還元反応にて、シミの発色を壊すもので、シミそのものの除去ではありません。シミ抜きにおいて、まずはシミの物質の除去を目指します。

 私の場合、染料の除去方法は、主に2種類ほどあります。

 第1は、繊維内に入り込んだ染料を、分子レベルで分散させて発色を抑える方法。浸透性能の高い界面活性剤を使用し、染料を繊維内から動かして分散させるのです。

 染料は、沢山の分子が集まって発色します。ですから、分散させてバラバラにすれば、強く発色しません。ともすれば、そのまますすぎ落とせば、シミそのものを落とせます。

 しかし界面活性剤だけでは不十分なので、ある薬剤を使用して繊維を軟らかくします。

 繊維には結晶領域と非結晶領域が存在し、染料などの分子レベルのシミは、この非結晶領域に入り込みます。繊維を軟らかくするとは、この非結晶領域を拡大して、染料を動きやすくするのです。

 これは、いわゆるガラスの転移点で、通常は温度を上げてこの作業をします。今回のシミは、これを薬剤で行います。薬剤で行う利点は、長時間ガラスの転移点を下げたまま、界面活性剤を反応させられることです。


 第2は、カチオン系(陽イオン)界面活性剤にて、染料と繊維の結合を切り離す方法。

 通常の染料が洗っても落ちないのは、染料が繊維と結合しているからです。今回の様な色移りの染料でも、若干の結合が予測され、そのために落ちにくいシミであると言えます。

 繊維(綿)と染料(直接染料)の結合は水素結合で、繊維がマイナス(OH)の電荷をもっています。ここにプラスの電荷をもった、洗浄性能の高い界面活性剤を使用すると、染料と繊維との結合が断ち切られ、染料が落ちやすくなります。

 今回は第1の方法のみで、染料のシミ抜きは完了できました。ただ、2日ほどかけて、ゆっくりとシミの染料を分散させましたので、かなり手間が掛かりました。
 

 今回は漂白剤は使用しませんでしたが、ケースによっては勿論のこと使用いたします。但し、それは、シミの染料を出来るだけ取り除いた、最終工程で使用するようにしております。
 
 プロのシミ抜きは、薬剤の知識と化学的な知識に加え、経験と積み重ねた実績が必要です。何故なら、今回一つは色柄もののシャツでしたが、シミ抜きの祭に、このパンツの色柄にも影響を及ぼすとも限らないためです。

 お客様は、興味深い話が聞けて満足されましたが・・・・如何でしょうか。今回は難しい話でしたが、シミ抜きの現場の一面を垣間見られたと思います。
 

(文/Takeshi Tsukiyama)













TAKESHI TSUKIYAMAの最新記事



イドカバネットは
衣類やお洗濯・お掃除など日常生活にまつわる情報を毎日お届けしています
気に入ったらFACEBOOKやTwitterから更新情報を入手してね

Facebookで更新情報をチェック!

関連記事

イドカバネット過去の人気記事
20150128-Seki-cover.jpgYシャツをきれいにたたむプロの技と旅行のパッキングのコツ
20150425-Enomoto-cover.jpgGW中にすませたい!部屋とクローゼットのデトックス
20150407-Asano-cover.jpg今すぐ実践!自宅でできる白シューズの正しいお手入れ!
20150216-Enomoto-cover.jpg洗って完璧!柔軟剤で引き寄せない!洗濯でできる花粉症対策
20150220-Nakamura-cover.jpg乾きにくい冬の洗濯物を3倍乾きやすくする干し方のコツ!
fastnar-photo01.jpgこれでイライラ0%!! ファスナーの滑りを良くする方法
20150112-Mika-cover.jpg結婚前に知っておきたい女を磨く洋服の知識・ウール製品の洗いかた
20150330-Yamamoto-cover.jpg面倒なんて言わせない 大切なお洋服を守る これで完璧!収納法
201412-osouji-yuka-cover.jpgこんなところも大掃除…誰でも簡単にできる”洗濯機の洗濯”
20150320-Nakamura-cover.jpg色移り解消の魔法の呪文「すぐに濃いめの熱いお湯」
20150404-Mika-cover2.jpg痩せて見える/ふっくら見える 色と見た目の深い関係・1
20150312-Yamamoto-cover.jpgニッポンのすべての女性に!衣替えで役立つ「3秒ルール」
20150513-Seki-cover.jpg洗濯物臭くないですか?部屋干しニオイ対策は、まず洗濯槽の洗浄を
20150318-Mihara-cover.jpg型崩れ防止をできる 長期収納向けのハンガーとはどんなもの?
20150110-moemoe-cover4.jpg実はめっちゃ汚い!!一枚のバスタオルを何日使いますか?
20150107-Aya-cover3.jpgつい持ち歩きたくなる?ニットのほつれを瞬時に隠す「魔法の針」
20150428-Mihara-cover3.jpgエステなどオイルまみれのタオルをスッキリきれいにするには
74a7c805d125814aec5797843fc.jpgニットを着る人には知っていて欲しい素材の特徴とお手入れ方法
20150414-moemoe-cover.jpg100均アイテムで作れる超かんたんミサンガのつくり方
20150426-Fukusawa-cover.jpg荷物を軽量に!キャンプや旅先で役立つお洗濯グッズ
SHARE
Twitter
Facebook
Line
google
Hatena
PAGE TOP