皆さん、「クリーニング事故賠償基準」って、ご存じでしょうか?
昭和54年に「クリーニング事故賠償基準」が制定されました。それが、およそ16年ぶりに改訂され、平成27年10月1日より執行されました。この機会に、「クリーニング事故賠償基準」について考えてみましょう。
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クリーニングでもしトラブルが発生した際に、それに対しての責任の所在や賠償の基準を明文化したものです。
但し、法的拘束力はありません。ですが法廷での判断は、クリーニング事故賠償基準がベースになると言われています。
「そんなのどうせ、クリーニング屋さんの都合のいいように決めているのだろう。」と思われるかも知れませんが・・・・、実際は全く逆です。クリーニング事故賠償基準は、制定当初から《挙証の転換》が基本理念の一つでした。これは消費者擁護の観点から、当時としては最も進んだ約款だと言っても過言ではありません。
そもそも民法では、被害者が加害者の責任を立証しなければなりません。
しかし、クリーニング事故賠償基準では、一応の過失をクリーニング側に推定して、その責任の有無をクリーニング側が立証する〔挙証責任の転換〕ことになっています。
これがなければ、一般の方がクリーニングやアパレルの過失を立証するなんてかなり難しく、結局は多くのケースで泣き寝入りせざる得ないでしょう。
この基準の制定には、クリーニング業者だけではなく弁護士・消費者・アパレル・関連省庁など、公正・公平な委員が参加されました。ですから、クリーニング事故賠償基準は商習慣として定着し、市民権を得ていると言えます。
この度、改訂された理由として、消費者の意識の変化や向上・そして消費者を擁護する法体系の整備に対応する必要がありました。
そしてもう1つは、インターネット受注や無人ロッカー方式など、新たなクリーニング業態に対しての対応でした。
それらに対応するために、今回の改訂では、説明義務規定と相互確認義務規定が追加されました。
更にクリーニング業の新たな業態に対応するために、クリーニング業務の支配圏にある宅配業者・下請け業者・保管業者などは、クリーニング事故賠償基準ではクリーニング業務の範囲であることを明確化しました。
《挙証の転換》に関しては、いき過ぎた解釈により現実と解離して、クリーニング業者の無過失責任と誤認されたり、過誤に要求されたりするケースがあった事も事実でした。
そこで基本理念はそのままで、実態と解離している部分を整理し、「クリーニング業者の責任」として第3条に改訂されました。
話が変わりますが、クリーニングはアパレルなどが製造した衣類を、他の業種であるクリーニング業者が加工するために、互いの基準や考えの違い、また粗悪な製品・洗浄方法など、様々な理由において事故が発生します。
また、その衣類を使用するのは消費者です。使用頻度を超えた劣化や、認識の違いなどで、消費者に事故の原因があることも少なくありません。
つまりクリーニング事故の発生原因は、クリーニング・アパレル・消費者それぞれ、もしくは互いが複合した原因で発生します。クリーニング業者単独の原因は、むしろ少数派だと言えます。
これを踏まえて、互いの信頼構築のためにも、クリーニング事故に対しての、明確な基準が必要だと思います。
事故を前提とした話を長々とするのは、あまり気持ちの良いものではないですが、よりよい消費生活を送るためには、認識していただきたいことがあります。
今回紹介した「クリーニング事故賠償基準」は、全国クリーニング生活衛生同業組合連合会が、主体となって制定されております。しかし、全てのクリーニング店が批准しているわけではなく、独自の契約約款を設定している業者も存在しております。
その中には、消費者に過酷な契約があるのも事実です。
保険や旅行などの契約約も然りで、細かい字を読むのも面倒なものです。しかし、大切な衣類を任せられるクリーニング業者であるかどうかを考えるならば、どのような契約約款のクリーニング業者なのか、それを確認することは大切です。
クリーニング事故賠償基準で運営しているお店は、信頼度のひとつの基準になると思います。
(文/Takeshi Tsukiyama)
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