すっかり暖かくなり、クリーニング店では一年で一番忙しい季節がやってまいりました。春の衣替えシーズンには、通常の倍を超える衣類が持ち込まれます。そんなもっとも忙しい時だからこそ、大切になってくるのが「検品」、いわゆる衣類のチェック作業です。
今回はシリーズ「クリーニング店の裏側」第1回として、預かった品物がどんな工程を経て、皆様のもとへ返されているのかをあるクリーニング店を例に紹介いたします。
普段何気なく利用するクリーニング店ですが、その仕事は「洗って」「乾かして」「プレス(アイロンがけなど)」するだけではありません。クリーニング店の品質を左右する要素として、お客様と直接的なコミュニケーションを行う、受付スタッフの役割はとても大きいといえるでしょう。
シャツのタタミ仕上がり・ハンガー仕上がり・ノリなし、ズボンのラインなしなど、お客様の好みや要望を作業者に伝えるメッセンジャーの役割はもちろんのこと、クリーニング工程でのリスクを低減し、衣類のコンディションを守るための大切な要素は、受付スタッフの力量にあると言っても過言ではありません。
最初のチェックは預かったその時、お客様の目の前で行われます。
ここでは種類、点数、ポケット内、目立った汚れやシミなど、長い時間お客様を待たせることの無いよう、必要最小限の項目を素早く確認。本格的なチェック作業は、お客様の商品である目印となる「タグ」を付ける時に行います。
この写真はあるクリーニング店での検品作業の様子です。
海外ブランドのダウンウェアをマーキング台と呼ばれる、タグ付け作業用の机に広げて衣類をチェックしています。
このダウンウェア、よく見るとファスナーの取手、ファスナートップが1つ取れてなくなっています。
このブランドのファスナーは特殊で、国産品のように同じものが市販されていません。
このスタッフは、すぐお客様に連絡を取り、「ファスナートップがないこと」と同時に「メーカーで修理を承っていること」を伝えました。
チェックすることの本質は、ただのトラブル防止ではなく、もう一度気分良くその洋服を着られるためのサポートにあります。
衣類の状況とともに、メンテナンス方法や製品の情報を伝えることも大切です。
また、別の衣類では取り扱い絵表示のラベルに注意はないものの、特殊なラバー素材の部品が使われていました。このスタッフは洗い、乾燥でのダメージを防ぐため、付属品全てをアルミホイルでくるみました。
こんな衣類への気遣いもカウンタースタッフの仕事なのです。
お店によって多少の差はあるかも知れませんが、素材、シルエット、ダメージの有無、など、衣類のチェックは「洗う」「シワを伸ばす」といった作業と同等に時間と手間をかける大切な工程といえるでしょう。
全ての衣類を採寸し、その様子を録画するクリーニング店もあります。一方で、時間がないお客様の都合に合わせ、その日に仕上がるよう必要最小限のチェックでニーズに応えるクリーニング店もあります。
自分の洋服に対する感覚、またファッションへのこだわりとカウンタースタッフの洋服に対する注意度を見比べ、利用する側・される側、双方の価値観が近いお店を選ぶことが、クリーニング店を選ぶ上で最も重要ではないでしょうか。
クリーニング店を「洗濯屋さん」ではなく、衣類のコンディションを保ちファッションを楽しむための「メンテナンス屋さん」という目で見れば、もっと自分にあったクリーニング店が見つかるかもしれません。
それではまた次回、外からは見えにくいクリーニング店の裏側をご紹介します。
(文/Tomoyuki Masuko)
<関連記事> クリーニング店で使われる機械など、こちらの記事もよく読まれております。
イドカバネットは
衣類やお洗濯・お掃除など日常生活にまつわる情報を毎日お届けしています
気に入ったらFACEBOOKやTwitterから更新情報を入手してね